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正しい漢字って? ― 〝次〟編

正しい〝次〟はどれでしょう?

上:小塚ゴシック Pro R
下:小塚明朝 Pro R

上の画像はみんな小学低学年の国語の授業でならったであろう〝次〟という漢字です。
上段にはゴシック体を代表して「小塚ゴシック Pro R」(アドビ)の中から、下段には明朝体を代表して「小塚明朝 Pro R」(同上)の中から各々の書体に含まれている〝次〟を3つ並べてみました。
つまり上記フォントで〝次〟を使う際には3つの字形の中から選べるのですが、あなたはどの〝次〟が正しい漢字だと思いますか?



みなさんは「左」、「中」、「右」の内どれを選んだのでしょうか?
「フォントなんて興味がないぜ!」という人には「左」の字形を、「フォントには興味もってるよ!」っていう人には「中」の字形を選んだ人が多いかもしれません。
小説などをよく読む人には「左」の字形が一番違和感を感じないのではないでしょうか。

では答えですが「全て正しい」です。 あぁ、石を投げないで
なぜなら3つとも【つぎ】を意味する同じ漢字(字体)であり、書かれ方が違うだけで個性の範囲でしかないからです。俗字などの(狭義での)異体字*1ですらありません。*2

・・・で終わったらわざわざブログに書くことではないので色々と考えてみましょう。

漢字の発祥地である中国では
繁体字
繁体字の〝次〟
細明體(MingLiU)
実は本家である中国の一部などで使われる繁体字*3では左で例示した通り、先ほどの3つのどれでもない字形が使われています。
これを見れば一目瞭然なのですが、実は〝次〟の偏部は「二水(冫)」ではなく「(漢数字)」です。氷を示す二水ではなく2番目を意味するであろう二となっているのでしょうか。なお〝次〟の部首は「欠」なので辞書を引く際にはご注意を
日本の歴史(戦前の活字)的には
築地活字
戦前活字の〝次〟
築地三号*5明朝活字
(ORADANO明朝)
戦前の活版を代表する東京活版製造所による明朝活字や戦後日本国語政策である当用漢字表によると活版印刷時代には「左」の〝次〟が一般的だったようです。
現在でも常用漢字外で偏旁に〝次〟を持つ漢字(例:「茨」など)ではこのタイプを使うことが推奨されています。

このタイプの字形は OpenType Pro 以上のフォントを用意した上で、異体字切りかえや異体字セレクタを使えるアプリでのみ使うことが出来ます。
日本の国語政策的には
MS 明朝
常用漢字の〝次〟
MS 明朝

「右」のタイプは戦後の連合国軍の占領政策を発端とする一連の国語改革の1つである当用漢字表/常用漢字表に由来する字形です。
中国で使われる簡体字*4でも同じ字形が使われています。
Windows で採用されているMS 明朝で採用されているため、前記の国語政策もあって一番みなれているタイプではないでしょうか。
活字や写植を祖先に持つ明朝体では後記するパソコン向け規格であるJIS漢字を採用する理由がなかったため、このタイプの〝次〟が一般的です。そのため小説やライトノベルで一般的に使われる石井明朝体、本蘭明朝体(共に写研)やリュウミン(モリサワ)やイワタ細明朝オールド(イワタ)などがこのタイプが採用され、よく読書する人には一番見慣れたものになっているかもしれません。
例示根拠が内閣告示として公布されているため印刷や仕事で用いるには一番適切な字形だと思います。

なおデザインポリシーの関係か大日本スクリーンのヒラギノ明朝ではこのタイプは使えません。
前記フォント以外でこのタイプの字形を使うには OpenType Pro 以上のフォントを用意した上で、異体字切りかえや異体字セレクタを使えるアプリで切り替えます。

日本語フォント的には
ヒラギノ明朝
JIS漢字の〝次〟
ヒラギノ明朝
「中」のタイプは「左」「右」の中間的な特徴を持ちます。
字形の根拠はパソコン、ワープロなどのコンピュータで処理できる漢字集合を制定した日本工業規格の例示字形となっています。(JIS漢字)
そのためパソコン専用に作られた比較的新しいフォントで基本的に採用されています。
MacOS X で採用されている「ヒラギノ明朝」やフリーフォントとして有名な「IPA明朝」、他にもほとんどの TrueType / OpenType Font はこのタイプになります。
個人的には二水と差別化されているという点で一番好きな字形ですが前期の通り印刷業界ではマイナーといえるかもしれません。

なおデザインポリシーの関係かモリサワ社の明朝体ではこのタイプは使えません。
あくまでも明朝体の話
タイプバンクゴシック体
ゴシック体の〝次〟
TBゴシック
と、長時間掛けて分類してみたのですが、このタイプ分類はあくまでも明朝体限定となります。
たとえばゴシック体では左に貼ったタイプバンクのように「左」「中」のどっちつかずのものが一般的です。なかには「中」タイプも存在しますが明朝体に引っ張られた一部のフォントだけとなります。
特例で最初の画像で使った小塚ゴシック(アドビ)はAdobeJapanという文字コードを制定しているからか3タイプを区別しますが個人的にはどうかと思います。
他にも筆記体である楷書体や教科書体は国内に限定する限りはすべて「左」に似た1タイプのみとなります。

と、長々と書いてみたんだけれど、ウチのようなイラストブログでこんな話題を載せても場違いな気がしますw いちフォントオタクとしてはこれを切欠に文字に興味を持ってもらえるとうれしく思います。
自分はテキストエディタでタグ打ちしているけど脚注を実現するのがこんなに面倒だとは思わなかった orz はてなブログだと比較的簡単だと聞いたけどホントなのでしょうか?

*1:字義(文字の意味)と字音(文字の読み方)が等しい字種ではあるが互いに異なる字体を持つ文字。
例えば漢字では「国」と「國」などの新・旧字体や「崎」と「」や「嵜」など、アルファベットでは「ブロック体」、「イタリック体」、「スワッシュ字形」など互いに置き換えても文意が変わらない文字関係のこと。

*2:今回の「次」のように同じ字体として区別しないことを「包摂」すると言う。

蛇足になるが Windows Vista が登場した際にバッシングとなった「MS書体が『JIS X 0208:1990 での例示字形』から『JIS X 0213:2004 での例示字形』になり、同じファイルなのに開くPCによって漢字が変わるのは大問題だ!」という意見は「包摂」を無視するものである。
本来は変更された字形を区別するべきではないし、もし問題が起きても文句を言うべき相手はマイクロソフトよりも日本工業標準調査会や国語審議会(現:文化審議会国語分科会)に対して行う必要があr(ry
てか、昔からJIS漢字には色々と問d(ry

*3:「はんたいじ」と読む。台湾(中華民国)や香港、マカオなどで用いられる特別な簡略化を受けていない字体。韓国でもごく稀に漢字表記される際に使われるよう。日本では旧字体と呼ばれる漢字に相当する。

*4:「かんたいじ」と読む。香港などを除く中華人民共和国の大部分やシンガポールで使われる画数を減らすなど簡略化された字体。考え方は日本の新字体に相当するが、手段が異なるため漢字の多くが違う形をしており互いには通用しない。

*5:戦前戦後に用いられた東洋活字寸法を号数と呼ぶ。分類は初号(15mm)、1号(9.5mm)~8号(1.75mm)に分けられる。3号は6mmの文字サイズをあらわす。当然だがパソコンのフォントと違って各サイズごとに彫りだす必要があった。

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